西洋人形・アンティックドールに関する本が豊富に集まりました。
西洋人形というカテゴリのなかには様々な種類の人形が含まれ、深い歴史があります。
「西洋において人形は、まず宗教的飾り人形として生み出され、次に上流貴族の間でファッションを伝達する手段として作られた」(「人形6 THE DOLL DOLLS OF JAPAN AND THE WORLD ANTIQUE DOLLS 日本と世界の人形のすべて 西洋人形」P125より引用)
14世紀ごろ、フランスを中心として上流階級の人々の流行(ファッション)の伝達を目的として人形が作られたことが西洋人形の起源と言われているようです。
徐々に「人形」としての可愛らしさ・美しさが追求され、肌の彩色や目の質感に個性を持った人形が作られます。
「19世紀初め頃より、素焼に彩色、二度焼きして艶消しで仕上げた、より人間の肌に近いソフトな情感を持った肌色のビスクヘッドが登場する。」(「人形6 THE DOLL DOLLS OF JAPAN AND THE WORLD ANTIQUE DOLLS 日本と世界の人形のすべて 西洋人形」P128より引用)
上記のように、19世紀初めにはビスクドールが誕生したと言われています。
今回紹介する2冊のなかには、19世紀半ばごろに設立したフランスとドイツの工房で製造された人形も多く掲載されており、2か国それぞれの特徴の違いも楽しむことができます。
●人形6 THE DOLL DOLLS OF JAPAN AND THE WORLD ANTIQUE DOLLS
日本と世界の人形のすべて 西洋人形
巻頭には「日本に渡ったアンティークドール」という企画が組まれ、フランス・ドイツのチャイナドールやワックスドール、ビスクドールの姿を収録。
フランスの代表的な工房「ジュモー社」で製造された人形にはポートレイト・トリステ・デポゼ・テートなどのタイプがありますが、憂いを秘めたまなざしの「トリステ」のビスクドールが特に印象的でした。
▼ジュモウ・トリステ (フランス ビスク)1885年ごろ
ボンネット×ふわふわとした襟元もとっても可愛いです。
▼エミール・ジュモウ(フランス ビスク)1886年ごろ
▼ ポートレート・ジュモウ(フランス ビスク)1870年
●西洋人形館 沢渡朔写真集 ANITA’S DOLL MUSEUM
8000体を超す人形のコレクションを持つアニタ・ホーキンズと写真家の沢渡朔がタッグを組んで作り上げた写真集。予約制の人形館に収められた、深い歴史を持つ人形たちの姿をじっくりと鑑賞することができます。
フランスのジュモー、ゴーチェ、ドイツのアーモンド・マルセル、シモン・アンド・ハルビックといった代表的な工房で製造された人形の姿はもちろんのこと、出所が曖昧な人形も登場。撮影は5日間半に及んだとのことです。一貫した品性のなかにユーモアが垣間見えるコレクションには圧倒的な人形愛を感じます。巻末には高橋睦郎、山尾悠子、四谷シモン、中井英夫といった面々からの寄稿文も。
上記2冊のほかにも数冊、西洋人形関連の本を店頭に並べています。
100年以上も前に製造された人形たちを見ていると、人形を愛玩する人が一定数存在してきたという事実があること、とても美しく尊いことだと感じます。深い歴史を持つ西洋人形・アンティックドールの世界をぜひ覗いてみてください。