日本のサブカルチャーの歴史の中でも、最も過激で自由だったメディアが、1970年代後半から1980年代にかけて発行されていた自販機本。その中でも最も大きなインパクトを残し、今では伝説の雑誌とも言われる「X-MAGAZINE」「JAM」と、正確には自販機本ではありませんがJAMの後継誌であり内容を継承している「HEAVEN」を紹介します。
・X-MAGAZINE(スキャンダル 悦楽超特急 Vol.5)
後に伝説的な自販機本「Jam」「HEAVEN」を創刊する高杉弾が、エルシー企画社長・明石賢生に「売れないから次号で潰れる予定」という自販機本の8ページ分を自由に任された結果、X-MAGAZINE(スキャンダル 悦楽超特急 Vol.5)の雑誌内雑誌「X-LAND」が誕生しました。アインシュタインの舌出し写真に「自動販売機で国家が買えることだってある」と掲げて、紙面の中で自由を宣言した斬新なページ「X-LAND」は、美沢真之介(隅田川乱一)と二人で一週間で作ったそうです。
・X-MAGAZINE(スキャンダル 悦楽超特急 Vol.6) 徹底特集:ドラッグ
エルシー企画社長・明石賢生に自販機本の8ページ分を任された高杉弾。各方面からの好評を受けて「一冊まるまるやってみない?」と言われて作ったのがこの「X-MAGAZINE(スキャンダル 悦楽超特急 Vol.6)」です。巻頭ではDEVOの写真を使用して雑誌”乗っ取り”を宣言。「大麻取締法はナンセンスだ」と掲げるドラッグ特集にはじまり、アンダーグラウドな映画、エロ、コラージュ、写真を掲載。エロとアートとパンクを結び付けたいというコンセプトのもと、誌名の提案者でもある美沢真之介に声をかけられて参加した八木眞一郎は、関心を持っていたケネス・アンガーを取り上げるため、映画評論家の佐藤重臣へのインタビュー記事を掲載しました。きわめてラディカルなこの自販機本の登場は「本の雑誌」でも取り上げられました。同誌が話題となったことをきっかけに、高杉弾は次に伝説の自販機本「Jam」を創刊します。「Jam」の前身となったのが、この「X-MAGAZINE」です。
・Jam 創刊号 特集:NO PUNK! NO WAVE! X-LAND
高杉弾、美沢真之介、八木眞一郎、山崎春美によって作られた伝説の自販機本「Jam」創刊号。パンクの精神に基づき、スキャンダルからオカルティズム、アンダーグラウンドな映画、エロ、ジョーク、ケネス・アンガー、臨済宗など、制作者が関心のあったことを詰め込んだ、常識はずれで面白い記事の数々は今も色あせていません。
※こちらはかつて『Jam』をまとめてコレクションできた時の記念写真。
・HEAVEN 創刊号 1980年4月号 編集発行人:佐内順一郎 デザイン:羽良多平吉ほか
1980年当時、音楽の分野で流行した「ニューウェーブ」を合言葉に「空中楼閣的天眼通」というキャッチコピーがつけられた美しい雑誌「HEAVEN」
伝説の自販機本『Jam』から誌名を変更して、編集発行人の佐内順一郎(高杉弾)を中心に、近藤十四郎、山崎春美、隅田川乱一、山本勝之らが、エロ、アヴァンギャルド音楽、オカルト、漫画、ビデオアートなど多岐にわたるジャンルの記事を編集・執筆しています。前身が自販機本であるものの、ポルノ的な写真はほぼ掲載されておらず、Jamと比較してもヴィジュアルに特化した内容です。
羽良多平吉がエディトリアルデザインに関わり、彼のブックデザインの中でも特に有名ですが、表紙以外に手掛けたページは一部分で、大類信など様々なデザイナーが誌面を構成しています。『Jam』は自販機本でしたが、『HEAVEN』は当時、一般の書店でも書店でも販売されていました。
『HEAVEN』もかつて、ほぼコンプリートでコレクションして販売していました。海外のお客さんにも人気でした。