嶽本野ばら『愛蔵版 それいぬ 正しい乙女になるために』 (スタッフS)

嶽本野ばら『愛蔵版 それいぬ 正しい乙女になるために』 (スタッフS)

「乙女のバイブル」として語り継がれてきた、嶽本氏の美意識が詰まったエッセイ集『それいぬ 正しい乙女になるために』 の愛藏版が国書刊行会から発行されました。

 私がはじめて「それいぬ」を読んだのは、もう20年ほど前のこと。当時は文庫を買いました。BABY, THE STARS SHINE BRIGHTやJane Marpleの服や、ベルナール・フォコンの人形写真に妙に惹かれていたあの頃、歪みや倒錯が美として成り立つこともある、そんな感覚を知ったのは嶽本氏の文章からでした。

中学を卒業する頃、反抗期に入るか入らないかくらいの時期、嶽本氏の作品やエッセイをよく読んでいました。横浜のビブレやマルイ、原宿のラフォーレに行って、装飾の多い服を買って、お年玉の貯金はすぐになくなりました。

「それいぬ」のなか、「春の病と盆栽少女」という章が好きです。春に憂鬱と不安を抱える「君」に向けて、歪みがそのまま美になる盆栽をたとえに、親密な温度を帯びた許しと肯定の言葉が差し出されます。

愛蔵版は見ての通り「可愛い」に全振りした装幀で、リボンを解いて本を取り出す一連の流れも含めて、自然と所作を少し整えたくなるような佇まい。 襟を正して向き合いたくなるような1冊を今もこうして生み出している野ばら氏、作中にて綴られている「決して僕は君を見限りやしません」という言葉は、嘘ではないように思います。 気になる方は、ぜひ手に取ってみてください。(文:スタッフS)

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