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古書ドリス

【新刊書籍】「いっそあの方が死んで下すったなら」

【新刊書籍】「いっそあの方が死んで下すったなら」

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井澤みゆき 著 国書刊行会 2025年 ハードカバー・帯付き

新刊書籍  

戦前の少女小説家 吉屋信子が憧れていたことを公言する作家伊澤みゆきの短篇集が国書刊行会から発行されました。1912年から16年にかけて、『少女画報』(東京社)に掲載された短篇60作品を収録。 

自身の外見を醜悪と思い込み、根強いコンプレックスを背負う主人公が同級生の少女に友情以上の思いを寄せながらも、想いのやり場に戸惑い、胸の痛みに耐える様を描いた短篇「闇に居て」からこの作品集は始まります。

「あたしのせいじゃないものを、この苦しさは。筆子はひたと両手で面をおさえました。おののく唇をきれよとばかり噛みしめた頬の上を、氷のような、ほんとに氷のような涙が、はらはらと。」(「闇に居て」より引用)

100年以上前の口語によって綴られる当時の少女の心の揺らぎ。そこで描かれる少女の持つ儚さは身体の病弱さからくるものだけではありません。悲痛な想いを抱えているからこそのフラジャイルな存在として、危ういバランスを有した少女像を浮かびあがらせます。その少女像のなかには現代の若者にとってもリアリティを感じさせる闇と執念が伺え、時代を超えた文学性を感じずにはいられません。「少女」というテーマを宿命のように背負った作者による幻の作品集、儚さと烈しさを併せ持った美文にぜひ触れてみてください。

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